「端唄」は江戸中期から盛んになったもので、武士から商人、文人たちの間でも人気がありました。歌詞の親しみやすさ、聴きやすい旋律、ゆったりと拍を刻む三味線のテンポの心地良さが特徴です。また、いろいろなジャンルの旋律型や歌唱様式の要素が入っていますので、短い中にも多様な日本音楽の特性を聴くことができます。本條流では、俚奏楽を構成する要素としての端唄を「古典」と位置づけています。

民謡は、権力におもねることなく民衆の間で歌い継がれてきたものです。ですから、いわゆる民謡歌手が唄う流行民謡とは性格を異にします。昔の人々は、土地や気候風土に育まれたうたをたくさん残してきました。この中にこそ、心の祈りや昔の情緒が宿っているのです。従って、本條流では民謡を育てることは日本人を育てることにつながると考えます。そして、その要素を俚奏楽に取り入れることで自然に密着したリズムや自由な音楽を形作っています。

「現代的三味線の奏法」というと、「現代邦楽」や「現代音楽」との関わりを連想してしまい、前衛的で難しいという印象があるかもしれません。本條流では、現代的三味線の奏法は「三味線」が持つ魅力を最大限に引き出すための方法の一つであると考えます。その可能性は一般的に考えられているよりもはるかに大きなものですし、その方法を修得していくことは俚奏楽の音楽性をさらに豊かにしていくことができると考えています。

邦楽の「流れ」として、現代に生まれた伝統音楽です。三味線音楽の源流をたずね、その役割を実践的に発展させ現代的解釈と創造を加え、消えてしまいそうな民謡曲を作品の中に発展した形で継承しています。

日本人の心の奥底にある美意識で独創性を持って、再生と回帰のなかに在る音楽を目指しています。

日本人の普遍的感性とリズム感、失われようとしている民族的な部分を三味線音楽として昇華させたものです。